のんびりとした日常生活が待っている

2011.06.09

恋という情熱は少々減っても、そこにはのんびりとした日常生活が待っているはずなのだから。そういえば、私が夫と結婚するかもしれないなと予感したのは、彼の下宿のソファーを見たときだった。それは古ぼけてはいたけれど、柔らかなコールテンのカバーがかかった寝転びやすそうな椅子だった。「さ、まあ、ここでゆっくりして」と誘っているかのように、真ん中にゆるやかなくぼみまでできている。下宿の部屋のど真ん中に、そのソファーが鎮座しているのを見たとき、私は「うん、この人とは気が合いそう」と、反射的に見てとった。そのとき一緒にいた友人は、「なんか椅子ばっかり目立つ変な部屋だね」と、なんら興味を示さなかったというのに…。そういえば、少し前のことになるが、カウチポテト族という言葉があった。カウチ、つまり長椅子に横たわってポテトチップスを食べながらビデオを見るような若者たちのことを、カウチポテト族というらしい。私が夫の部屋でソファーを見たのはもう20年以上も前のことだから、もちろん、まだそんな言葉はなく、カウチという単語も知らなかったが、私はカウチポテト族の走りだったのかもしれない。それも、筋金入りの…。だって、ビデオなんて見なくたっていいんだもの。ただ長椅子があればいいんだもの。欲を言えば、ポテトチップスの代わりに干し柿があると最高だけど。自分が目指す結婚にぴったりくる人こんな態度で結婚に臨んだ私だから、結婚後にお互いを高め合おうなんてことは、全然考えなかった。夫婦でクタクタ寝転びながら自堕落におしゃべりをする。これが私の理想の結婚であった。もちろん、私にだって、ほんの少しは向上心というものがある。自分を高めたいと思わないわけではない。けれども、それを夫婦の間で実践したいとは思わない。もし自分を高めたいと思うなら、ひとりで本を読んだり、専門家に教えを乞うほうがはるかに能率的だ。夫とはほかにすることがいっぱいある。私の場合、寝転ぶということがそれに当たった。もっとも、寝転びながらおしゃべりをするという理想は、残念ながら半分しか果たされなかった。

[参考情報]
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