青森県の十三という、潟湖と海の境界を成す細長い砂洲の上の集落で眺めた日本海に沈む夕陽。富山市の市街地の外れにある、広場として小さな駅で、知人が迎えに来るのを待っていたひととき。初めて自転車で達した県外の町で、翌朝早起きして散策した川べりの界隈。それらは私の過去の旅における、宿泊地近辺の忘れがたい記憶のいくつかだ。宿泊を伴うサイクリングをしたことがあるかどうかは、サイクルツーリストとしての経験を計る試金石のひとつでもある。
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宿泊サイクリングの場合は、なんといっても、装備が増える。着替えはもちろん、日帰りの旅以上に天候・気温などの変化に対応する衣類が必要だし、歯ブラシなどのトラベルキットも携行したほうが良い。加えて、宿泊してまで出かける場所は遠隔地のことが多いため、「輪行」などの別技術も必要となってくることが多い。しかし、そうした苦労以上に、旅する歓びが大きいのもまた宿泊サイクリングなのだ。私はこれには、旅先で眠るということが決定的な要因だと考えている。昼間旅して、意識のなかに入ってきたさまざまな事象が、無意識のどこかに転送されてゆく。旅先での目覚めは、明らかに日常と違う気分をもたらしてくれる。