実務経験だけで選ぶのは考えもの

2012.01.23

建築士を選ぶ条件として「少なくとも10年以上の設計実務があり、二〇軒以上は住宅を設計していること」などというはなしをきく。しかし、問題は設計の仕事の内容の多彩性である。たとえば、工務店やハウスメーカーの下請けを専門とする設計事務所で設計をしている場合、プランは建築主と営業マンとの相談により決定しており、建築士は確認申請に必要な図面を数枚作成するにすぎない。設計図書の作成は単純作業の繰り返しですむため、半年も経たずに二〇軒以上の設計を完了してしまう。

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また、親の経営する設計事務所で息子が住宅設計を担当してはいるものの、親に図面の添削指導と修正をされ、一〇年を経っても設計能力の上達がみられない例もよくある。しかしこの設計事務所での住宅は、息子が設計をしたことになっている。これと同じ形態に、数名の優秀な建築士のいる設計事務所に縁故で入所をし、末席でスタッフの一人として部分的に協力をしたにすぎない者が「この住宅は私が設計しました」と図面や写真を見せ、自己の経歴の紹介をしてしまうことがある。確かに設計に「関与」はしていたが、父親による図面の添削と同様に、上司の優秀な建築士たちにより図面は修正され、やっと今日まで首がつながってきたにすぎない。